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第34話
バタンバタンと音をたてながら自室に入り、引き出しを探ってから玄関に向かった。そこにはまだ紫呉がサクラを抱きながら立っており、慌ただしい様子の由弦に苦笑している。
「慌てて事故らないようにな」
そう告げて、ポンポンと紫呉は由弦の頭を撫でた。それがくすぐったくてヘラリと笑いそうになるのを唇を噛んで堪える。
「行ってきます!」
このままだと顔がおかしなことになりそうだと、由弦は勢いよく家を出た。そんな後ろ姿に再び紫呉が苦笑を零したことにも気づかぬまま、ただ小さく「いってらっしゃい」という言葉だけを聞いて。
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