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第38話
雪也の心はなかなか見透かせないが、周はとても分かりやすい。彼らに前世の記憶はないはずだが、あの時と同じように周は雪也への好意を隠そうともしない。否、年齢差も無くなった今の方があからさまだろう。昼食に周が重箱弁当を持ってくるのだって、あまり食べない雪也を気遣ってのものだ。もちろんその場にいれば由弦や蒼、湊も一緒に食べるが、中身は雪也が好むものや食べやすいものが多い。
いつかは鈍感な雪也でも気が付いて、そして付き合うのだろうと思っていた。その〝いつか〟がすでに訪れていたのだろうか。
「うーん、それはどうだろう。雪也は周に優しいし、逆も然りだけど、そういう恋人同士の甘さは感じられないけどなぁ」
珈琲を飲みながら優は考え込むように首を傾げる。確かに、紫呉から見ても雪也と周の間に何か進展があったとは思えない。ならばなぜ、由弦はあんなに挙動不審なのだろう。
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