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第40話

「お前は馬鹿か。いくら考えるのは自分の仕事じゃないなどと言ったとしてもプライベートなことくらいもっと考えろ。由弦が雪也と周のどちらかを好きなのだと仮定したら、何故お前まで挙動不審対象人物に入っているんだ」 「……俺があいつのこと好きだってバレてるからか?」  それでも気づいていないフリをされているのであれば、それはもう脈無しだ。何も言わずに振られているようなものじゃないか。どんどんと落ち込み、もはや後ろにどんよりとした影まで見えるような気がする紫呉に、弥生はもう一度深い深いため息をついた。 「それなら尚更おかしいだろう。もう一度言うが、由弦の言動がおかしくなっているのは、お前と雪也が一緒にいた時、お前と周が一緒にいた時、お前と雪也と周が一緒にいた時、雪也と周が一緒にいた時だ。三人一緒、あるいは雪也と周が一緒にいた時だけならばわかるが、お前の言い分が正しいとすれば由弦は雪也にも周にも恋愛的な好意を抱いている二股人間になるぞ? 私にはそんな器用な奴には見えんがな」  それに雪也はともかく、周は他人の感情に疎いわけではない。自分が二股の対象になるのも厭うだろうが、雪也に対して不誠実な態度を取ろうものなら、それが例え相手の片思いだったとしても怒り狂い容赦などしないだろう。そんなことになれば、今のルームシェアだって崩壊しているに違いない。

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