869 / 981

第45話

「あぁ、サクラも来たんだね。いらっしゃい」  しゃがみ込んだ雪也の手がワシャワシャとサクラの頭を撫でる。それが心地よいのか、もっと、もっとと頭をすり寄せるサクラに微笑み、雪也はその小さな身体を抱き上げた。チラ、と由弦の手元に視線を向ける。 「難しい問題でも出た? 僕が役にたつかわからないけど、見ようか?」  由弦が持っていた教科書とノートに、雪也はそう問いかける。コテンと首を傾げた雪也に、由弦は弾かれたように顔を上げ、コクコクと大げさなほどに頷いた。 「そう、ちょっと詰まっちまって……。でも、雪也ものんびりしてただろ?」  良いのか? と視線で問いかければ、雪也は優しく微笑んで扉を開け、中へ促した。雪也が良いと言ってくれるならと、由弦も部屋の中に入る。あまり入ることの無い雪也の部屋は物が無いわけではないがそれなりに整えてあり、居心地が良い。雪也は部屋の隅に置かれていたフワフワのクッションを二つ持ってくると、由弦とサクラに勧めた。サクラは勝手知ったるなんとやらとばかりにクッションに身体を預け、ゴロゴロと楽しそうに転がっている。それを微笑ましく見ながら由弦も座った。

ともだちにシェアしよう!