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第46話

「ここなんだけどさ、何回やっても答えが違うんだよな」  最初から雑談するのもおかしいだろうと、由弦は持ってきていた教科書を開いてひとつの問題を指さした。ちなみに由弦はこれが一番難しそうだなと思っただけで実際には一度も解いていない。 「あぁ、これは応用問題だろうね」  由弦がわからないことを聞きに来るのは日常茶飯事なため、雪也も彼がちょっとした嘘をついたことに気づかぬまま、教科書を受け取って部屋にあるメモ用紙に問題を書き写す。そして少しも詰まることなくスラスラと計算式を書いて、その答えが間違っていないかを確かめた。雪也は慎重な性格で、自分の考えが合っているかをまず確認する癖がある。由弦もそれをわかっているため、雪也が声をかけるまで静かに待った。いつの間にか雪也の足にお尻をくっつけていたサクラのイビキが響き渡る。

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