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第57話

「雪也は大福が好きなんだって。イチゴとかよりも、普通のあずきのやつ」 「…………で?」  やはり今回もこれだったか、と紫呉は隠すこともせずため息をつく。なぜかは知らないが、由弦はここ最近、頻繁に紫呉の元を訪れては雪也の好みなどを告げてくるのだ。  雪也は紫呉にとって大切な後輩であり、決して言葉に出すことはできないが、前世から見守り続けた弟のような、息子のような存在だ。彼が喜んでくれれば紫呉としても嬉しいし、好物を見かけた時は買って行ってやろうか、なんて思うことも頻繁にある。だがそれは雪也に対してだけではないし、せっかく由弦が来ているのに率先してしたい話でもない。どうせ教えてくれるなら由弦の好みを山ほど教えてもらいたいものだ。

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