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第60話

「蒼が〝由弦はもうちょっと恋愛というものを学んだ方が良いかもね~〟って言って、最近人気らしい少女漫画買ってくれたんだ。そこでプレゼント作戦? してたから」  由弦のルームシェア仲間であり、かつての世界でも良き理解者、良き友として側にいた蒼が何を思って少女漫画を渡したのか容易に想像ができて、紫呉は小さく息をつきながら瞼を閉じた。 (悪ぃな蒼。お前の作戦は失敗だったようだ)  蒼が学ぶよう望んだ恋心ではなく、由弦は想い人の関心を引く手段を学んだようだ。それもよくわからない方向で。 「プレゼントっていうならクリスマスとか誕生日に贈るようなものが良いんじゃないかって思うんだけど、なんかそうじゃないみたいなんだ。缶ジュースとか、そういう相手が好きだけど、でも数百円で買えるような軽いのが良いんだって。だから、大福」  そのために雪也から数百円で買える程度の好きなものを聞いてきたのか、と紫呉は思わず瞼を閉じたまま眠りにつきそうになる。

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