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第62話

 あの時だって、紫呉はわからなかった。自分が戦うことになって死ぬことはあるかもしれないと覚悟はしていたし、その可能性を考えなかったわけではない。だが死ぬつもりで弥生と共に走ったわけではないし、由弦にいたっては死ぬという予想さえしていなかった。無事に帰ることができたなら、きっと彼は庵で待っていてくれるだろうと、信じて疑っていなかった。けれど結果は、物語で言うならバッドエンドだった。紫呉と由弦だけではない。幸せにしたいと願った人たちは皆、弥生と優でさえ、ハッピーエンドとはとても言えない最期を迎えた。だから結局、物語と違って行動の先に何が待っているかなんて、わかりやしないのだ。 「……先輩の言いたいことはなんとなくわかったけどさ、俺は、先輩がハッピーエンドになってほしい」  由弦にとって紫呉は一等好きな先輩だ。もちろん弥生も優も大好きだけど、紫呉はなぜか由弦の中で特別なのだ。きっと話題やノリといった様々なものの波長が合うのだろうとボンヤリ思っているが、明確なものなど由弦本人にもわからない。だが何故か、強く、それこそ焦燥にかられるくらい、紫呉には、紫呉の言うところのハッピーエンドを迎えてほしいと願っている。 お休みさせていただき、ありがとうございました! 更新再開していこうと思いますので、またどうぞよろしくお願いいたします。 十時(如月皐)

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