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第63話
「不幸になるつもりはさらさら無ぇが、それでも、俺のハッピーエンドをお前が気にする必要はねぇよ。お前はお前の幸せを見つけりゃ良い」
記憶なんて無くていい。ただ由弦が側にいて、もう一度抱きしめて、そして愛し合うことができたなら、それが紫呉にとってのハッピーエンドとなるだろう。けれど、その為に由弦の心を利用したいとは思わない。
もしも由弦が別の誰かを好きになって、結ばれて、もしかすれば家庭や子供をもって、それが彼の幸せであるのなら、紫呉の幸せなど考えずにそちらへ走って行ってほしいと願っている。不幸になりたいわけではないが、どうしても紫呉にとっては己のハッピーエンドよりも由弦の幸せの方が比重が大きいのだ。
「お前の目にどう映ってるか知らねぇが、俺はこれでも、今をそれなりに楽しんでんだ。お前らもいるしな」
だから変な気は遣わなくて良いと紫呉は由弦の頭をポンポンと撫でる。その様子を、ジッとサクラの瞳が見つめていた。
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