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第81話

(……安心?)  胸の内に抱いたそれに由弦は瞬きをする。同じだ。先程雪也の前でゴチャゴチャと考えていた時と同じ、不思議な感覚がする。  紫呉は確かに優しく頼れる先輩だけど、出会ったのはこの大学に入ってからだ。なのに、なぜ自分はずっと昔から彼を知っているかのようなことを時折思うのだろう。 「……なぁ、先輩」  首を傾げ、ジッと己の足を見つめながら由弦は呼ぶ。「ん?」と紫呉が応えたのを聞いて、由弦は言葉を探すように唇を震わせた。 「固まってた先輩に言うのも悪いから、落ち着いたらで良いっていうか、また今度でも良いんだけどさ、ちょっと訊いて良いか? もしかしなくても、変な事を訊くと思うんだけど」  自分に理解できないことなんてこの世界には溢れかえっている。いちいち気にしていたらキリがないから、放置する場合も多い。けれど何故か、この胸の内にポツリ、ポツリと涌く不思議な感覚は、無視してはいけないような気がした。とはいえ、由弦一人でこれを知り、理解することは難しいだろう。そしてまた、ふと自分は思うのだ。  紫呉なら、何かを知っているのではないか、と。

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