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第86話

 雪也が眠ることに対して何を思っているのかなんて僅かも知らないというのに、勝手に決めつけて、勝手に嫉妬するような真似をするなんて。  例え紫呉が絡まなかったとしても、雪也は大切な友達なんだ。由弦にはもちろん、由弦の我儘で引き取ったサクラにだって優しく接し、家族のように愛してくれている。それなのに、同じ優しさを返すどころか、当てこするようなことを考えてしまった。 「由弦?」  自分の思考が嫌になって、唇を噛みながら俯きそうになった時、後ろから名を呼ばれて由弦は振り返った。そこには無表情ながらも不思議そうに瞳を揺らす周の姿がある。いつの間に移動したのだろうか、先程まで雪也の側にいたサクラがその腕に抱かれていた。 「ずっと雪也を見てるけど、何? たぶん、まだ起きないと思うけど」  言葉だけを見れば咎められているようにも感じるそれは、しかし純粋な心配しか含まれていない。言葉少ない周の発言は時折学友たちに誤解されることもあるが、由弦はなぜか初めて出会った時から間違えたことはなかった。

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