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第89話

「由弦は、たぶん雪也のことが大好き。大好きだから、雪也は誰からも愛されて当然だと思ってる」  由弦は雪也の悪いところというものを口にしたことは無い。否、もしかしたらそんなものは無いとさえ思っているのかもしれない。  雪也は頭が良い。雪也は努力家だ。雪也は綺麗で、とても優しい。そんなことを嘘偽りなく本気でいつも口にしている。誰の前であったとしても。 「由弦にとって、たぶん、雪也はただの友達じゃなくて、親友でもなくて、特別な存在なんだと思う。これは、ただの俺の予想でしかないけど、でも、そんなにハズレじゃないと自分では思ってる。それくらい、傍から見たら由弦にとって雪也は特別。特別は、別に恋愛感情だけじゃないから」  多くの大人の中で親が特別であるように、兄妹が特別であるように、血の繋がりはなくとも、恋愛感情を抱かずとも、特別と思う人間は存在する。

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