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第90話
「だって、きっと、弥生先輩や優先輩も雪也を特別だと思ってる。俺たちを平等に大切にしてくれているけど、でも、雪也は殊更特別なんだろうなと思う。それは紫呉先輩も変わらない。少なくとも俺には、そう見える」
彼らが周たちを放って雪也だけに何かをしたり、あるいは与えたりすることは無い。いっそわざとらしいほどに、後輩皆平等を貫いている。けれど彼らの心の奥深くでは、平等ではないのだろうと周は思っていた。
雪也を見る瞳の中にある光。慈愛と慈悲に満ちた、愛おしい、愛おしいと思う光。紫呉が由弦を見る瞳とは少し違う光。雪也が、周を見る時と同じ光。
「由弦は一度、〝雪也は絶対に恋愛的に愛される存在だ〟っていうのを頭から追いやって物事を見るべきだと思う。雪也に迷惑をかけないでと言うわけじゃないけど、サクラにずっと心配かけるのは可哀想。サクラは、由弦が大切にするって誓って連れてきた子でしょ」
ね、と周が再び撫でると、サクラはまったくだと言わんばかりにため息をついて、やれやれと首を横に振った。チラ、と由弦に視線を向けて、迷子のような顔をしている彼に再びため息をつく。そして〝ほら、抱っこ〟と言わんばかりに腕を伸ばした。
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