915 / 981
第91話
柔らかくて、小さなその身体を抱き上げる。由弦の腕に納まったサクラは、再びやれやれと息をついた。何でもわかっているようなこの小さな存在に、由弦は思わず小さな笑みを零す。
「お前にも心配かけてたのか? サクラ」
ポツリと呟けば、何を今更と言わんばかりにサクラは鼻を鳴らした。そっけない態度を取りながら、しかしサクラは由弦の腕から逃れようとはしない。この腕が一番安心できるのだと言わんばかりに、そっと身体を預けている。
「ごめんな、サクラ」
柔らかなその背に顔を埋める。頬に温かさを感じていれば、クスクスと楽しそうに笑う声が聞こえた。その声に思わず由弦は顔を上げる。視線の先にはボンヤリとしつつも目を開けた雪也が、由弦とサクラを見て楽しそうに笑っていた。
「雪也、起きてたのか?」
まさか先程の会話を聞かれていたのだろうかと由弦は焦るが、雪也の隣に座っている周は驚くでも慌てるでもなく、少しズレたブランケットを雪也にかけなおしている。それに穏やかな微笑みで礼を言いつつ、雪也は再び由弦とサクラにトロンと眠そうな視線を向けた。
ともだちにシェアしよう!

