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第96話
「僕が届けられたら良かったんだけど、今からスーパーの特売に行かないといけなくて。だから、悪いけどお願いできないかな?」
今日は蒼と由弦以外は皆家に居ないのだと再び眉を下げる蒼に、しかたない、と由弦は頷いた。男子大学生五人の胃袋を満足させようと思うのなら、スーパーの特売は何よりも優先されるべきことなのである。サクラも理解したのだろう、不満そうな顔をしながらも由弦の胡坐の中から出て、抱っこを待つ体勢だ。
「わかった。湊に届けたら良いんだな?」
「ありがと~。湊はこの時間だと第二校舎にいると思うから、よろしくね」
助かった、と言って蒼は件の忘れ物であろう教科書とノートを渡した。それを鞄に入れて肩にかけると、サクラを抱き上げる。蒼と一緒にリビングに向かい、ペットベッドにサクラを降ろしてやれば、やれやれと言わんばかりに横たわった。深いため息をついて首を横に振る姿がなんとも可愛らしい。
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