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第115話
「だから、庵に連れて行ったんだ。雪也と周が住んでた庵に」
温かだった庵。小さくて、けれどだからこそ人の温もりをすぐ近くに感じることができた。
「周は雪也が拾って来たんだけどな、雪也自身は弥生が連れてきたんだ。ちょっと訳ありでな。救うために弥生は雪也を連れてきて、最初は屋敷で一緒に暮らしてたし、弥生も俺たちもずっとそれが続くと思ってたんだが、雪也は出ていくと言った。居心地悪かったのかもしれねぇし、自分の居場所にはできなかったのかもしれねぇ。そのあたりはあの頃の雪也でないとわかんねぇけどな。とりあえず、色々あいつなりに考えて出ていくって言ったんだろう。それを否定はできねぇけど、放り出すこともできなかったから、弥生が持っていた庵に住まわせたんだ。だからお前を連れて行きやすかったし、なによりあいつらならお前やサクラを受け入れてくれると確信してた。実際、あいつらはお前を見てもサクラを見ても怖がったり嫌がったりせず、受け入れてくれた」
器が違うのだと、あの時弥生は言っていた。知らぬものを目の前にした時、石を投げて排除しようとした者たちと、受け入れることのできる雪也達は器が違うのだと。
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