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第116話
「サクラなんか会ってすぐに雪也に抱かれて安心したように寝てたんだぞ。それを見てお前も安心したんだろうな。まるで昔からの友人みたいにすぐ馴染んだ。雪也が生業にしてた薬を作って、周が飯を作って、お前とサクラは薬草の手入れをして。あの庵でのお前たちはずっと、楽しそうだった」
何のかかわりも無い三人と一匹だった。それに彼らは皆、家族の縁が薄かったように思う。けれど紫呉の目には確かに彼らは寄せ集めの個々ではなく、家族だった。
「弥生と、優と、俺。三人でよく庵に遊びに行ったもんだ。山ほど食材を持って行けば、皆でわいわい喋りながら料理をするんだ。そんでお前と、よく遊びに来てた湊が俺に強請って、槍の稽古もしてやってたな。俺が見本を見せる度にお前らはキラキラした目で見てきて、ちょっとばかし恥ずかしいっつうか、照れ臭いっつうか、まぁでも、やっぱり嬉しかったな」
そう、今で言うならヒーローを見る子供のように、純粋でキラキラした、眩しいほどの瞳だった。カッコいいと何の裏も含みも無く言ってくれたいとし子たち。
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