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第127話
「……弥生、さま……優さま……」
涙で少し枯れた声。その声が紡いだ名に二人はピタリと動きを止めた。ゆっくりと由弦に視線を向ける。そんな二人に由弦は涙を流しながらも笑みを浮かべて見せた。
「また、会えた……」
遅くなっちゃったけど、また。
その言葉にすべてを察したのだろう、優は瞳を潤ませながらもあの優しい日々を思い出させる柔らかな微笑みを浮かべ、弥生はクシャリと由弦の頭を撫でた。懐かしいその感触に再び由弦の瞳が潤む。ふわりと脳裏に蘇るのはただただ笑いに満ちた、あの瞬間。
「サクラ」
弥生が呼ぶ。その小さくてフワフワな身体が弥生に抱き上げられた。
「お前も嬉しいのか? ずっと顔が笑ってるぞ」
そんな風に言って、弥生はサクラの額に頬を寄せた。サクラも嬉しいのだろう、優しい瞳でニッコリと笑っている。ふと、サクラの首につけられた赤い首輪が、美しい組紐に見えた。
弥生がサクラにくれた、最初の贈り物だ。もう組紐はどこにもないけれど、想いは僅かも変わらない。
涙を浮かべつつも皆で笑っていれば、その声が聞こえたのだろう。カチャ、と微かな音をたてて扉が開かれる。そっと顔を覗かせるのは湊と蒼だ。
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