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第129話
かつての家族に、仲間に、会えるかもしれない。死ぬまで、会えないかもしれない。あの尊い日々を共有したいという思いと、残酷なものは忘れていてほしいという思い。思い出してほしいけれど、自らに起きたあの衝撃を考えるなら、安易に思い出してほしいなんて無邪気に願えるはずもなく。
〝お前が生きてるのは、俺が生きてるのは、今この時なんだからな〟
そう言った紫呉がどれほどに葛藤し、けれど、どこまでも自分を想っていてくれていたかを由弦は知る。願いと愛情と、苦しみと慈愛を紫呉も、弥生も優も、ずっと抱え続けながら、それでも由弦達の側にいてくれた。そして今、由弦もそちら側の人間になろうとしている。
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