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第138話
周がジッと由弦と紫呉を見つめる。そしてそっと、真っ直ぐに手を伸ばして指さした。
「揉めるのも話し合うのも良いけど、ここでは雪也が気づく。だから駄目。由弦の部屋が難しいというなら俺の部屋を使っても良い」
鍵はかかっていない。好きに使えばいい。
「だから、ここから降りては駄目」
淡々とした口調に、紫呉の中で力が抜けていくのがわかった。
雪也だけを気にするなら、この階段を降りようが、どこへ行こうが、どうでも良い事だろう。だが周はここから降りてはいけないという。その理由は明白で、言われるまで他のことに頭が回らなかった自分を紫呉は恥じた。
何を急に怒って、視野を狭くしているのだか。
「……わりぃな。俺が俺であるためにも、お前の部屋を借りて良いか?」
努めて穏やかな声音を出そうとする紫呉に、周はひとつ頷いた。そして再びジッと由弦を見つめ、紫呉に視線を移す。
「紫呉先輩」
呼ばれ、紫呉は周に視線を向ける。いつもの無表情で周が紫呉を静かに見つめていた。
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