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第143話

「やっぱりな。俺の嫌な予感ってのはだいたい当たるんだ。記憶が戻ったら流石にそれは勘違いだったって気づくかと思ったが、そんなことも無かったな」  勘違いは勘違いのまま残されてしまったらしい。 「そういえば、お前は記憶を取り戻した時も言ってたな。〝雪也にあんたが手を〟って。それについては実際の所よくわかってねぇが、今はその詳細は必要ねぇだろう。お前が何かに拘ってて、それが勘違いを助長させてるんだってわかれば充分だ」  はぁ、と重いため息が零れる。ビクリと由弦の肩が跳ねた。あの時と同じくらいの年頃であるはずなのに、目の前の由弦は酷く小さく見える。まるで親に怒られるのを待つ子供のようだ。 「もう言っちまうがな、確かに俺にとって雪也は特別だ。それは変えようもない事実だろう」  周たちですら同等にはならない。それくらい紫呉にとって雪也は特別。それが言葉にされて、どうしてだか身体が勝手に俯いてしまう。そんな由弦に、紫呉は続けた。 「だがそれはお前が思ってるような特別じゃねぇよ。その〝特別〟は、今も昔もお前のものだからだ」  流石に二人も三人もそういう意味で愛する器用さなんて持ち合わせていない。

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