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第154話
「それで良い。私はなにも全員が私の意思に従えなどと思っているわけではない。私は私の感情のままに静観した。ならば周も周の感情のままに動いたとて、誰にも責める権利はないし、そもそも責めようとも思っていない」
むしろ、と弥生は思う。
雪也のこと以外で自分の意思を示すことの少なかった周がこうして感情のままに動けるようになったのは良いことだ。時代さえも超えてしまったが、ようやく彼は普通の子供になれたのだろう。思わずクスリと笑みが溢れる。
「私はな、周。特別気が長いわけではないんだ」
あれだけ紫呉と由弦のことを見守るに留めていたのに? と周は無言のまま視線で問いかける。まるで信じていないという瞳だ。
「嘘をついているわけではない。ただ、そうだな。言うなればあの二人を見ているのは少し、楽しかった」
またからかい癖が出たのかと周は思ったが、それにしては声音が随分と優しい。どこか親が子供のことを話すそれに似ていて、周は内心で首を傾げた。
由弦はともかく、紫呉は弥生と同い年だ。それに弥生はいつだって紫呉を対等に見ていたというのに、どういうことだろうか。
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