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四日『虫の日』
「きゃっ」
ブーンと大きな羽音を立てて何かが飛んで来た。驚いた晴日は思わずクッションを盾にして逃げ腰になる。カーテンに止まった黒い虫を、信周が器用に窓の外に追い出した。
「よし、飛んでった。もう大丈夫だよ」
いつまでもクッションの陰に隠れている晴日を、信周が笑う。
「何でカニは好きなくせに虫はダメなの?」
「カニと虫は全然違うよ。カニは……可愛いもん」
ぎゅっとクッションを抱きしめて、晴日は水槽に視線を向ける。カニたちは口の周りにぷくぷくと泡を吐いている。
【参照◇五月二十二日『国際生物多様性の日』】
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