216 / 368
三日『ハサミの日』
「あれ?」
信周の頭を見つめていた晴日が突然大きな声を出した。
「ノブくん、白髪なんてあったんだ」
「えっ、白髪? 嘘だろ?」
「結構あるよ、こっちにもほら、一、ニ、三……」
「マジ!? そんなにっ?」
驚いた信周は洗面所に駆け込み鏡を睨む。しばらくしてとぼとぼと戻ってきた信周の手にはハサミがあった。
「ハル、全部切ってくれる?」
「いいよ、じゃあここに寝て?」
やわらかな膝枕の上で信周は目を閉じる。その眉間にはしわ。よほどショックだったのだろう。晴日が一本一本丁寧に白髪を切っていく。切り終わった後、全部で十数本の白髪を、信周はうつろな目で見つめていた。
ともだちにシェアしよう!