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四日『天使の日』
急なトラブルと残業のせいでくたくただった。シャワーから出てくれば、部屋にはやさしい出汁の香り。信周は胸いっぱいに香りを吸い込んだ。軽く食事をしてきたのに、とたんにお腹がぐぐーっと鳴る。
「お疲れ様、ノブくん」
にこにこと笑って駆け寄ってきた晴日が、信周の胸にそっと顔を押し付け背中に腕を回した。信周もぎゅっと晴日を抱きしめる。
――ああ、天使だ。俺の天使。
ふわふわと柔らかい感触がゆっくりと信周を癒していく。
「なんかめっちゃいい匂いする。お腹空いたかも」
「へへ、夜食におじや作ったの。食べて」
「ありがと、ハル」
何てことない卵のおじや。今夜は何だか特別に優しい味がする。
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