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十一日『ウインクの日』
「何してんの? ウインクの練習?」
鏡の前で不器用に目をぱちぱちしている信周を見て、晴日は笑った。
「うーん、ゴミ入ったのかな、痛いんだよね」
「俺見てあげる」
「うん」
晴日は信周の頬を両手で挟んでぐっと顔を近づけた。至近距離で瞳を覗き込む。
「何にもないけどなぁ……」
そう言って晴日は、信周の目に突然「ふっ」と息を強く吹きかけた。
「っ、何すんだよっ……あれ、治った?」
「でしょぉ? えへへ。目にゴミが入ったら『ふっ』てしたらいいんだって、ばあちゃんが言ってた」
晴日は笑って、ぱちっと器用に片目だけ閉じてみせた。
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