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十三日『ペットの健康診断の日』

 ぽん、と肩に手を乗せられて晴日は信周を振り返った。 「どうしよう、みんな元気ないの。ご飯も残してる」  晴日はすぐに水槽に視線を戻した。カニたちはじっとしている。 「大丈夫だよ。冬眠前なんてそんなものじゃない?」 「冬眠? カニって冬眠するの?」 「うん、冬越しするには落ち葉とか入れてやったらいいみたい」 「そうなんだぁ、よかった」    心配そうだった晴日の顏がふっと緩んだ。「ノブくん何でも知ってる」晴日の小さな呟きが信周の耳に届く。実は昨日、信周もふと気になって調べたばかりだった。  ――調べといてよかったぜ。    信周は心の中でこっそりそう呟くと、水槽を覗き込んで揺れる晴日の後頭部を見つめた。  

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