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十日『いい音の日』

 ぽくっ、ぽくっ。  明日からの旅行の準備をする信周の耳に小気味よい音が聞こえてきた。振り返ると、なんと晴日がお菓子を堂々と盗み食いしているではないか。 「あっハル、それ明日のおやつ」 「えへへ、ちょこっとだけ」 「何だよ、ハルだけ。俺も食う」  信周はそう言って、晴日が咥えたポッキーを反対側から食べ進める。唇と唇が軽く触れ合った。 「ふふ、ノブくん急に何すんの?」 「いいじゃん。今度は俺がチョコな、ん」  信周は新しいポッキーを咥えると、晴日の目の前に顔を近づけた。二人はポッキーに夢中で、もう準備なんてそっちのけだ。

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