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第15話  オナホの涙②

「瀬名!」  エレベーターを降り、1階のエントランスに着いたとたん、同期の冴木(さえき)のまぶしい笑顔が目に飛び込んでくる。 「久しぶりだな。元気にしてたか?」 「……さ、冴木――」  よれていたスーツのネクタイを片手で締め直した瀬名は、 「ど……どうしてここへ――?」  せいいっぱいの笑顔でたずねる。 「この近くに営業に来てて――ちょうど昼メシどきだし会えたらうれしいなと思って来てみたんだ」  冴木 凌(さえき りょう)は、同期入社の男だった。  会社の野球チーム――スカイアストロズでは、瀬名とバッテリーを組むキャッチャー。  サラサラの黒髪と外国人のような端正な顔立ちで、瀬名と並ぶツートップの人気があった。 「――瀬名……なんだか顔が赤いけど――大丈夫か?」 「えっ……!? だっ、だっ、大丈夫だよっ――」  瀬名は、慌てて視線をそらす。  スーツの下に隠れた、乳首に括りつけられた使用済みコンドーム。  装着させられたままの貞操帯と、ペンを4本入れられてガムテで固定されたケツ穴。 (……イ、イカ臭くないだろうか……?)  スーツを着るとき、部下の目を盗んでこっそりファブリーズを吹き付けてきたが――それでも臭う気がする。  口もとを手で覆い、思案に暮れる瀬名に、 「ごめんな、なんだか迷惑だったか……?」  申し訳なさそうに詫びる冴木。 「いっ、いやっ……そんなっ――そんなことない――久しぶりに会えてうれしいよ」 「……そうか?」 「あ、ああ――よ、よかったらこの近くの居酒屋に行かないか? お得なランチがあるんだ」 「いいな。東京のことはさっぱりわからないから――案内してくれたら助かるよ」 「もちろん。じゃあ行こう」  乳首に吊り下げられた使用済みコンドームをタプタプ揺らしながら、瀬名は冴木と並んで歩きだした。           ※  M商事株式会社から歩いて2、3分の距離のビルの地下にある居酒屋。  地下にあるため、どこか薄暗い。  テーブル席に向かい合って座り、焼き魚定食を注文する。   「瀬名。最近、野球してるか?」 「え?」 「おまえが出向したあと入社してきた社長の甥っ子がいまピッチャーをしてるんだが、正直その――あまり上手(うま)くなくてな――……よかったらまた、おまえにピッチャーをしてほしいんだ」 「それは……」 「もちろん、新しい仕事で忙しいのはわかってる。だが実際いまのメンツで勝ち上がるのはキツくて……おまえの球をまた受けたい――そんな思いが強くなってついこうしてたずねてきてしまった……」 「冴木――」 「すまん、人の良いおまえにいつも頼ってしまって……ほんとうに申し訳ないと思ってる」  顔の前で両手を合わせる冴木の左手の薬指に光るリングに気付いた瀬名は、 「さ、冴木……その指輪は――?」  椅子に押され、尻穴に食い込むマッキーの痛みをこらえながら聞く。 「あ? ……ああ――実は――御門(みかど)さんと婚約したんだ」 「…………えっ……!?」 「早く報告しようと思っていたんだが、忙しいだろうとつい遠慮してしまって――先週結納したんだ。来年の春、式を挙げようと思ってる。結婚式――出てくれるかよな?」 「…………そ、そうか――知らなかった……も、もちろんだ……お、おめでとう……」  瀬名は、定食のトレーにそっと箸を置いた。  動揺しすぎて、それ以上食事が喉を通らなかった。 「ありがとう。やっぱり瀬名はいいヤツだな。――おれたち、親友だもんな!」  満面の笑みで、冴木は、チキン竜田定食のからあげにかじりつく。目の前でモリモリご飯を食べる冴木をぼんやり眺めながら、瀬名は、 (御門さんと冴木が――そうだったのか……)  野球部のマネージャーをしてくれていた、御門めぐみ(みかど めぐみ)のすらりとした立ち姿を脳裏に思い描いた。  制服のブラウスのボタンが弾け飛びそうなほどの巨乳。  ほっそりした腰つきに、むっちりしたタイトスカートの美尻。  夜な夜なおかずにしてオナっていた――美貌のマネージャーと冴木がまさか付き合っていたとは――――  「また連絡するから。今度練習に来いよ」 「……ああ――来てくれてありがとう」  着替える前に、追加で腹に書かれた『おチンポ大好きぃ♡』『肉便器絶賛修行中!』の文字をスーツの下に隠しながら、瀬名は、笑顔で手を振った。  エレベーターで50階に上がり、重役専用フロアに戻ったときには、昼休み終了時間を数分オーバーしてしまっていた。 「遅いぞ、クソ便器!」  大慌てでスーツを脱ぎ、重役たちがいる一面ガラス張りのミーティングルームへと走る。 「もっ、申し訳ございませんっ……!」  素っ裸で、床に額をこすりつけ、土下座した瀬名の頭をドカッ、と革靴で踏みつけた重役は、 「なーに呑気にランチなんかしてんだ。とっととケツ穴拡げておチンポご奉仕しろ!」  瀬名の頭をグリグリかかとで踏み潰す。 「ウッ! はっ、はいっ……! いますぐご奉仕させていただきますっ……!」  頭から離れない――去り際の冴木の幸せそうな笑顔。  床にこすりつけた顔に涙を浮かべた瀬名は考える。  冴木はきっといまごろ、オフィス街を颯爽と歩いているんだろうな……。  

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