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第17話 堕ちていく肉体

 ピンポーンッ。  ――休日。  瀬名の自宅アパートのインターフォンが鳴った。  ワンルームのベッドで眠っていた瀬名は、「はい……」と目をこすりながら玄関ドアを開け――「えっ……?」と目をみはった。  外に立っていたのは、冴木だった。 「……さ、冴木……?」 「わるい! 寝てたか?」  ボサボサの髪にユニクロのルームウェアというラフないでたちの瀬名に、ぱりっとしたトレンチコート姿の冴木は声をかける。 「あ、ああ――で、でもどうして……?」 「おまえのLINEが既読がついても返信がないから心配で見に来たんだ。めぐみもおまえに会いたいっていうしな」 「こんにちは。瀬名さん」  白いロングコートに茶色いフォックスファーのマフラーを巻きつけた御門めぐみが、冴木の背中からひょこっと顔をのぞかせる。  ぐちゃぐちゃに散らかった部屋を振り返った瀬名は、 「ちょ――ちょっとだけ待ってて……!」  ドアを閉め、散らかっていたものを入れたゴミ袋をクローゼットに放り込んだ。  招き入れたふたりにティーバックの紅茶とせんべいを出し、 「ごめん、こんなものしかなくて……」  と頭を下げる。    ――ベッドと、小さなこたつテーブルと、テレビと、1口コンロのキッチンと冷蔵庫のある9畳の洋間。  テーブルにあったノートパソコンを床にどかし、テーブルを挟んで座る瀬名。  チンポは、休みの日も貞操帯で拘束されている。 「……なんだか顔色がよくないけど――大丈夫か?」 「えっ……!? だっ、だっ、大丈夫だよっ……!」  慌てた瀬名はこたつに足を入れる。  貞操帯を付けて生活していることは死んでもバレたくなかった。 「瀬名さん、出向あとどれくらいですか?」  御門めぐみが首をかしげ聞く。 「え――あと1ヶ月くらいかな。年内いっぱいだから―」 「じゃあ1月になったら戻ってくるんですね?」  ぱっと瞳を輝かせる御門めぐみ。 「よかったぁ! うちの係の女の子たち、みんな瀬名さんのファンだから♡ 帰ってきたらお疲れさま会しましょっ」 「あ、ああ……ありがとう――」  テーブルごしに漂ってくる、御門めぐみの甘い香水のにおい。  会社にいたときは、そのにおいを嗅ぐと半勃起してしまうほどムラムラした。  だが、いまはもう、御門めぐみは冴木の婚約者なのだ……。 「……瀬名。タバコ吸っていいか?」 「あっ、もっ、もちろん」  立ち上がった瀬名は、窓際の棚から灰皿を持ってくる。  傍らに置いていたトレンチコートの内ポケットを漁っていた冴木は、 「あれタバコがない――ちょっとそこのコンビニまで買いに行ってくるよ」  と部屋を出ていく。  とつぜん、御門めぐみとふたりきりになった瀬名は、 (な、なに話そう……)  戸惑いながら、 「あ――こ、婚約おめでとう……」  御門めぐみに微笑みかけた。 「おれ、その、全然知らなくて――冴木と御門さんのこと――」 「瀬名さん……」 「冴木はいいヤツだから――きっと幸せになれると思うよ。落ち着いたら今度ゆっくりお祝いさせてほし――」  言い終わるか終わらぬかのうち、立ち上がった御門めぐみが「瀬名さぁっ……んっ!」と突進してくる。 「……ウッ……!?」  タックルを受け、ベッドに押し倒された瀬名は、 「みっ、みっ……みかどさんっ……!?」  と目を丸くする。 「私ほんとうはっ――瀬名さんのほうが好きなのッ……!」  馬乗りになった御門めぐみは、 「冴木さんは実家のパイプが太くて不労所得で一生食べていけるしっ、結婚すれば私がブランド品とパチで作った闇金の借金チャラにしてくれるっていうから、いいかなぁ、って思ったんだけどっ……チッ、チンコがっ――租チンすぎてぇっ……入ってんだか入ってないんだかっ、よくわかんないのよぉっ……!」  白いセーターの胸をゆさゆさ揺らしながら、瀬名に抱きつく。 「やっぱり私は瀬名さんがいいっ……!」  むっちりした乳房の感触。  御門めぐみの手が股間に伸びた瞬間、瀬名は、御門めぐみを突き飛ばした。 「ひぃっ……!」  ドスンッ、とベッドから落ち、ひっくり返る御門めぐみ。  マイクロミニのスカートの下のレースのパンティが、大股開きの股間から見える。 (あっ……)  貞操帯に覆われたチンポに、ズンッ、と突き抜けるような刺激を感じた瀬名は、 「ご――ごめん、おれ……」  シーツを下半身に巻きつける。  そのとき、ガチャッ、と玄関ドアの開く音がし、冴木が部屋に入ってきた。 「ただい――えっ……?」  目をぱちくりさせた冴木は、「ど――どうしたんだ? めぐみ?」と御門めぐみに駆け寄る。 「パンツが見えてるじゃないかっ?」 「あっ、ごっ、ごっ……ゴキブリがっ……出たんだっ……!」  瀬名はとっさにウソをつく。 「み、御門さんとおれでゴキブリと戦って! そしたらいつのまにかこんなことに……」 「――こんな真冬にゴキブリか?」 「こっ、今年は暖冬だからっ……」 「そ、そうねっ……びっくりしたわぁ――」  乱れたスカートを直した御門めぐみが、「そろそろおいとましましょ。お邪魔しました、瀬名さん」コートを手にそそくさと立ち上がる。     浮かない顔の冴木と、さっさと部屋を出ていく御門めぐみ。  2人が帰ったあと、爆発しそうなチンポの疼きを抱えた瀬名は、 (オッ、オッ、オナりたいッ……!)  ベッドに突っ伏す。  ロックされた貞操帯のなかで、ドクドクと脈打つ欲望が暴れ出す。 「アッ……! アァッ……!」  たまらず、スウェットシャツのなかに手を突っ込み、乳首をつまみあげる。  拡張訓練でメス牛並に育った乳首を指先でクリクリこすり、 「おっ、おっぱいっ……! おっぱいコリコリィッ! ぎもぢいいっ♡」  チンポ以外の快楽をむさぼろうとする。 (たっ、足りないっ……! まだまだ足りないぃっ……!)  クローゼットを開け、奥の段ボール箱の中に隠していた吸盤付きディルドを引っぱりだす。  ペニスを模した肌色のディルドを強力な吸盤で冷蔵庫にくっつけ、ラブローションを垂らし、 「ケッ、ケツマンコ奴隷瀬名べんきっ! ディルドオナニーさせていただきますっ!」  と叫ぶ。  突き出した尻穴をディルドにあてがい、ズコッ、ズコッ、とナカに突っ込む。  カリ高な設計の先端が、前立腺に突き当たり、 「あっ、そっ、そこっ……! いっ、いいっ……♡ ほしがりザコまんこっ! 感じちゃいますぅっ♡」  と腰をへコらせる。  誰も見ていない部屋でひとり、瀬名はけんめいに腰を振り続けていた。   

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