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第31話 ニューヨークの真実③※
衣装や小道具の段ボール箱が置かれた廊下の先にある楽屋。
その扉をコンコンッ、と叩き、開けた外国人は、
「ミスター。冴木さまをお連れいたしました」
と部屋のなかにいた人物に呼びかける。
「どうぞ」
手招きされ、
「は、はぁ……どうも――」
恐縮しながら、なかに入る冴木。
楽屋は、6畳ほどの狭い空間だった。
正面にある鏡台に置かれたメイクボックス。
衣装のかかったポールハンガー。
灰皿や食べかけのフードボックスや、ビールの空き缶が転がるガラステーブル。
黒い箱に乱雑に突っ込まれた、バイブレーターやピンクローター、ニップルクリップなどの淫具。
リノリウムの床に散らばった使いかけのコンドームを見た冴木は絶句する。
ミスターと呼ばれた人物は、黒い横長のスツールのようなものに腰かけていた。
すらりとした長身に合う洒落たグレーのスーツ姿。
持て余すような長い脚を組み、膝の上にタブレットを載せている。
まるで俳優のように端正な顔立ちの男は、
「やぁ。久しぶりだね」
と冴木にほほえみかける。
その声に、
「あっ……!」
冴木は声を上げる。
あの日――居酒屋で、冴木に「瀬名くんが性奴隷に堕ちる姿を見たくないか?」と聞いてきた男だ。
「きみには大変世話になった。おかげで性奴隷調教はほぼ完成したよ」
男は、金髪の外国人に手にしていたタブレットを渡す。
「どうぞ」
外国人は冴木にタブレットを差し出す。
「KETSUMANKOの調教記録です。どうぞお好きなだけごらんになってください」
冴木はふるえる指で、タブレットをスクロールする。
『肉便器係』ネクタイでチンポを縛られ、ノーズフックで鼻の穴を全開にして、ちんちんポーズをとる瀬名。
M字開脚で吊り上げられ、巨大なホースディルドでアナルを抉られ、洗濯バサミをえぐいほど付けられたチンポをギンギンに勃たせる瀬名。
『便器』と顔に落書きされ、開口器でむりやり開かされた口に注ぎ込まれる小便を飲まされる瀬名。
ガニ股ポーズで幼児用オムツを穿かされ、アへりながらうんこをする瀬名の動画……
『あっ、あへっ♡ KETSUMANKOッ! クソしまぁ~すぅ♡ こっ、こないだみたいにオムツからちびらないようにしっかりなかにしますっ! あっ、もっ! でるぅっ! 3日間ガマンした限界うんこぉっ! ブリブリでまひゅぅ~~ッ!!!』
ブゥッ! ブブブブブ――――ッ! という巨大な放屁のあと、顔を真っ赤にして立ったままオムツに排泄する。
『おっ! ほぉっ! おぉぉぉぉっっ――――んっ!!!』
大量の浣腸液のせいでゆるくなった便が小さなオムツの端から漏れ、
『おいこら! 漏らすなと言っただろ!』
叱責の声が飛ぶ。
『もっ、申し訳っ! ありませっ……! ぐぅっ! うぅぅぅっっっ……!』
オムツの前から勃起したチンポが飛び出し、ガマン汁がピュッ、ピュッ! と飛び散る。
『クソしながら感じやがって、このドヘンタイが!』
鞭のパドルが、チンポに容赦なく振り落とされる。
『ギャッ! アァッ! どっ、どうかっ! ゆるしてっ! ゆるしてっ……くださいっ!』
大量の糞の重みでぶら下がったオムツが、鞭打ちの刺激でタプタプ揺れる。
『臭いクソばかりしやがって! このクソったれケツマンコ!』
もう一本の鞭が背中に飛ぶ。
『アッ! アッ! アァッ! アァァァ――――――ッッ!!!』
とまらないうんこと瀬名の悲鳴。
その顔が痛みだけではない、ドマゾの悦楽に満ちているのを確認した冴木は、
(せ、瀬名……こ、こんなに――こんなに立派な性奴隷になって……)
夢にまで見た瀬名の性奴隷姿に、ペニスをギンギンにする。
「――ごらんのとおり、こいつはもう、クソすら自由にできない。365日、排泄も射精もすべて管理される。瀬名という名前も奪われ、「KETSUMANKO 」と呼ばれ、ケツ穴の写真を顔に貼ってステージに出る。
自分でチンポをさわることは生涯ゆるされない。こいつがイけるのは乳首か、ケツ穴に与えられる快楽でのみ。イくときは、「KETSUMANKOイきますっ! イかせていただきますっ!」と申告してからイかないと、仕置きされる。まぁその仕置きですら、いまのこいつにはもう、ごほうびなのかもしれないがな」
座っていた黒いスツールのようなものを、革靴の先でドカッ、と蹴る男。
「……ぅっ! ……ぐッ……!」
という呻き声がスツールのようなものから聞こえる。
「こら。イスのくせにしゃべるな」
(えっ……?)
立ち上がった男は、スツールのようなものの下側を思いきり蹴り上げる。
「ごっ……! ぐっぉぉッ……!」
今度はもっとはっきり悲鳴が聞こえた。
ちがう。
これはスツールなんかじゃない。
これは――
「く」の字に折れ曲がった黒い物体が、芋虫のように、「ぐぅぅっ……」とうごめく。
「まったく。ほんの少しもじっとしていられないんだな」
呆れたように言った男は、メンソールのタバコに火をつけ、ふうっ、と煙を吐き出す。
「まぁいい。そろそろ挨拶しなさい。わかったか? KETSUMANKO?」
これは――この黒いスツールのようなものの正体は――瀬名だ。
「は、はい……わかりました――サー(ご主人さま)……」
黒い物体がもそもそと動き、床に這いつくばる。
全身ぴっちり貼りついた黒のラバースーツ。
顔の部分も、口のまわりにわずかに呼吸用の穴があるだけで、目もとも見えない。
「……さ、冴木――だよ……ね?」
見えないからか不安そうに、ラバーマスクに覆われた顔を持ち上げた瀬名は、
「わざわざこんなところまで来てくれてありがとう――う、うれしいよ……」
わずかにのぞく唇をゆるませる。
「せ、瀬名……」
そのとき、
「おい」
男が強い口調で言った。
「ちがうだろう。KETSUMANKO。おまえの顔は――どこだ?」
「あっ……」
はじかれたようにすくみあがった瀬名は、
「そっ、そうでした! もっ、申し訳ありませんっ……」
床に額をこすりつけ、くるっと向きを変えた。
手を前に突いて這いつくばり、両脚を大きく開いた、カエルのような格好。
(なっ……!?)
突き出たその尻を見た冴木はあぜんとする。
瀬名のラバースーツは、尻の部分だけ、丸く空いていた。
丸い尻の中心で全開になった、卑猥な縦割れアナル。
「おまえの顔はどこだ。答えろ、KETSUMANKO」
「ケッ、ケツマンコの顔はっ! このケツ穴ッ! ケツマンコでぇっ――すっ!」
足の裏を重ね合わせ、尻を高く掲げた瀬名は絶叫する。
「ケツマンコはケツ穴が顔ですっ! だからステージでも顔にケツマンコを貼って躍らせていただいてますっ!」
「よし。そのとおりだ」
男が、瀬名の尻穴のまわりを優しくなぞる。
「それとおまえの名前はなんだ? 瀬名か?」
「いっ、いえっ……――ちがいますっ。わたくしはKETSUMANKOッ! KETSUMANKOですっ……。
あっ……さ、冴木――お、おれのことは、KETSUMANKOと呼んでくれ――」
「えっ……!?」
「お、お願いだ――おれはもう瀬名ではない。たんなる便器――肉便器のKETSUMANKOなんだ……」
男が両手で抉じ開けた瀬名のアナルが、パクッ、パクッ、と収縮する。
ナマではじめて見た――瀬名のケツ穴……瀬名の――KETSUMANKO……
誘うようにヒクつくその穴を凝視した冴木は、
「わかった……」
ごくんっ、と唾を飲み、
「こっちこそ――会えてうれしいよ」
抑えきれぬ興奮に唇の端を歪めて言った。
「元気そうでなによりだ――KETSUMANKO」
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