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Ωにのしかかる闇
出会ったのは仕事場でお世話になっている、本庄さんだった。
この人すごいΩのこと嫌うからあまり好きじゃないんだよな……。
「ご家族でいらしたんですか?」
「ええ、そうよ、今度一番下の子が小学校に入学するから必要な物揃えにね、あらお宅も?」
「はい、ということは僕の息子と同じ学年なんですね」
「あら、そうなの、でその子は?」
「えっと、今夫と一緒にいて……」
「旦那さんと来てるなんて、あなた本当にΩなのね」
冷たい目で見られる自分の姿。
ズキ
「はい…」
「仕事ができるΩなんて本当に嫌ね、それに学校でも会わないといけないなんて……」
「ママ!! これ買って」
ひゅっ っと息がつまる。
「あの、では僕はこれで」
「ええ」
その場から逃げる重たい足。
苦しい、気持ち悪い。
属性がはっきりしてきて世の中的にも差別や比較などは収まっているとはいえ、個人攻撃はまだよくあること。
現に中学生のころはいじめにあっていた。
でも……。
「涼……会いたい」
とトイレに駆け込み
胃液を吐き出した。
「裕太を探さないと……」
立ち上がりどうにか中央広場の遊び場まで到着した。
裕太とはぐれて30分ほど経ってしまったので心配だ。
「あ! お母さんここ!!」
と呼んできたのは裕太だった。
「よかった」
一安心して近くの椅子に腰かける。
ジャングルジムのてっぺんから手を振ってこちらに降りてきた。
「お母さん僕ねジャングルジムてっぺんまで登ったんだよ、すごい?」
こちらの事情も知らないで自分のことだけをアピールする。
「うん、すごいね」
頭を撫でた。
「あ! お母さん」
「どうしたの?」
「ごめんなさい、僕お母さんから離れちゃった」
「いつから気づいていたの?」
「えっと」
義父さんに怒られちゃうな、ちゃんとしつけておかないと。
「んー一度ね文房具のとこ戻ったんだ、そしたらお母さんが暗い顔しながら誰かと話してて、でもお母さんの口からお父さんのこと話してたからもしかしたらここにいるんじゃないかと思って戻ってきたの」
ズキ
「そっか」
と優しく抱いた。
背中を何度かポンポンと撫でて
「お父さんはまだ海外かな、いつかきっと帰ってくるよ」
「うん」
「裕太まだ元気?」
「うん!!」
「そしたら文房具選び再開しよっか」
「うん!!」
さっきまで緑って言ってたのに急に黄色がいいと言い始め、結局鉛筆はいろんな柄を購入して帰宅した。
「ねぇ! 明日はばぁばの家に遊びに行くんだよね?」
「うん、そうだよ、明後日の夜まで」
「じゃぁ明日はばあばの家でお泊り?」
「うん、そうだよ」
「やったー!!」
僕も久々に1人になれる時間だ。
本当は涼がいればHもしたいけど……無理なんだよね。
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