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情緒不安定
涼……はもう僕の元へは戻ってこないのに、どうしてこう彼の笑顔だけがちらつくんだよ。
「お母さん、大丈夫?」
「あ、うん大丈夫だよ」
「子供に心配されるなんてあなた……って顔色悪そうね、大丈夫?」
「あ、はい大丈夫です」
水嶋医院の看護師をやっているから僕のことはちょいちょい心配してくれる。
でも普通に怖い。
「もしかして発情期くるの?」
「いえ、あと2週間後くらいなのでまたご連絡します、お気遣いいただきありがとうございます」
これ以上ご迷惑をかけられないからすっと離れようとしたら頬に手があたり真剣な顔つきで様子を見られた。
「あなたが大丈夫でも子供は気にします、気をつけなさいとはあなたの体質上言えないけど、無理する前にこちらに連絡をしなさい」
「は……はい、ありがとうございます」
にこっと笑って答えた。
でもまだ心配そうなお義母がいた。
「ねぇばぁば、はつじょうきってなぁに?」
「裕太にはまだ早いからいいのよ」
「えー僕だけ仲間はずれじゃん」
「さぁて朝ごはんまだでしょ、食べに行きましょ」
「うん!!」
「アハハ」
「ほら、あなたも支度しなさい」
「え? 今日はお義母様だけと……」
「こんな病弱そうな顔したあなたをここにおいておけるわけないでしょ、あなたは病院に連れて行くから」
「あ、でも1人で行けます」
ギロっと睨まれて
「あ、はい一緒に行きます」
強制的に病院に行くことになった。
リムジンで水嶋医院に送られ、そのまま裕太と食事に向かった。
「はぁーもう予約はしましたからね、ちゃんと受信しないと裕太は一生返しません」
ってメールが来た。
こわっ……。
水嶋医院は高校生からお世話になっている涼のお父さんがちょー優しい人でいろいろ相談に乗ってくれたこともあり、涼との結婚もOKを出してくれた。
お義母とは性格が大違いすぎて逆によく涼との結婚を許してくれたなと今でも思っている。
受付に行き、診察券と健康保険証を出すと受付のお姉さんが
「水嶋由貴様ですね、8番の扉からお入りください」
そう、僕は所謂ご家族枠にはいるため、並ばずに診察を受けられる。
扉をあけ入るとお義父がいらっしゃった。
「こんにちは」
「やぁどうしたんだい?」
「あの、お忙しい中お時間をいただいてしまいありがとうございます」
「妻の頼みだからね、それに裕太くんを大事に育ててくれている由貴くんにできることがあったら私はなんでもするよ」
ちょーいい人でしょ。
「顔、少し悪いみたいだね、食欲がないのかな?」
「はい、昨日ちょっとキツく責められちゃって……情緒不安定なんて恥ずかしいことなんですが……」
「そうか、いまだに言ってくる人がいるのか、困ったな、少し薬を出しておこうかな、あと情緒不安定じゃないΩがいたら逆にすごいことだよ、いつでも私や妻を頼りなさい、君には本当に悪いことをしたのは水嶋家なんだから」
「あ、いえ、お金の援助だったり学生時代からお世話になっているのはこちらなので……」
涼に会えないのが寂しくないって言ったらウソになる。
でも仕方ないんだ。
あきらめないと……。
「こらこら、自分を責めないで」
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