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おもいちがい

 自己嫌悪に苛まれていい加減泣き明かした頃その時はやってきた。 「ツカサ」 どうやら泣きすぎて少し寝てしまっていたようだ。誰かに名前を呼ばれて目を開けるとそこには想い人が居た。さっき、逃げてしまった相手。愛しくてたまらないのにそれを伝えたら、迷惑をかけてしまう人。 「なんで、ここに?」 「お前、自分の言いたい事だけ言って逃げただろ。その落とし前をつけに来た。」 普段は名前を呼んでくれるのに。弓弦がお前って言う時はだいたい叱ってくれるとき。さっきまで泣いていたせいで少し鼻声だし、目元は腫れてるし。きっと鏡を見たら、いや、見なくても酷い顔をしているだろう。 「逃げて、ごめん。」 自分でもびっくりするような小さい声が出た。 「ツカサ、お前なんで俺が怒ってるか分かる?」 「、、、逃げたから」 「はぁ」 声色はいつもと一緒なはずなのに。どうしてか最後のため息に怒気を感じる。『違うの?』と聞くだけなのに。声が出ない。 「あのさ、俺の言おうとしてたこと、想像出来る?」 少し間が空いて弓弦が口を開いた。 「お断りの返事。」 「んなわけないだろ。ほら、こっち向け。」 言われるがままに弓弦の方を向く。そしたら急に顎を手で支えられた。 「ん、?!ん~!……んぁっ…!」 いきなり唇を塞がれて脳みそがびっくりした。生理現象で出た涙を拭くことも許されず、ただ輪郭に反って流れていくそれはさっきの涙とは違うのを感じた。 「はぁ…急に何…?」 「俺からこういうのしたいって思えるのはツカサだけだよ」 そう言われて脳みそがフリーズした。なんで、好きじゃない相手とキスできるんだよ…!どうせちょっとエッチなキスしても『今の気分』とか言ってはぐらかすんだろ? 「弓弦は、優しいから…だからこんな俺でも慰めてくれるんだろ…?」  偏屈な自分が大嫌いだ。

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