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ー天界・第七天・アラボト・リオの城・玉座 「早速で、悪いんだけど…」 不意に、声を出した男性が、目の前に居る青年に、紙を渡した。 「これは」 「レイナが、フランスから、取り寄せたスイーツのレシピでね。是非、君に、作ってもらいたいと、お願いしてきた…」 「僕にですか?」 「なにせ、突然の思いつきで、動いたから、レシピが、当たっているかは解らないが、一度、作ってみてくれ…」 申し訳なさそうに謝る男性は、この、天界を統べる王。 『レイナ』と、口にしたのは、彼の愛娘にあたる皇女の事であった。 何が、切っ掛けで、フランスからレシピを、取り寄せたのかは解らないが。 どうしても、彼に、作って欲しい物だと、察した男性は。 無理を承知で、お願いしたのであった。 「構いませんが」 「助かるよ。この、レシピの為に、家臣達は、鶏を育てる様に、承ったと、報告を受けている…。どんな、スイーツかは…教えてくれないんだ…」 聞いたとしても『秘密です』と、言われそうな気がしてきた。 「ギリセ様にも、教えないとか、珍しいですね」 「だろう。コノから、促して聞いてみてくれないかい…」 「えぇ」 ギリセと、呼ばれた男性は、お茶目に、ウィンクをした。 娘の事を知りたい時は、大抵、お世話係に、聞いているのだが、生憎、下界に偵察で、留守している為に、聞けない。 よって、青年に、然り気無く、聞いて欲しいと、思った。 突然の思いつきは、何時もだが、今回は、大掛かりな気がしてきた。 家臣達に、小屋を作らせ、鶏を育て始めたのは、意外な趣味が、発症したのかと、思ったが。 『鶏は、卵を産みます。鶏卵は、色んな料理に、使えますわ』 なんて…。 明るい声音で、言っていたけど。 スイーツの為だけに、私の娘は…。 天界きっての料理研究家である大天使『コノ』を、ご召募してきた。 それを、意味する物は、きっと、彼女しか解らない。 『はぁ』と、短い溜め息を吐いたギリセは、肩を落とした。

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