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過去 2
もう少しで事務作業を終えて、ひなどり棟に向かわねばならない、そんな時だった。
「冴島さん、これ、担当の子の名前です。お願いします」
俺の席にやってきた花見さんが、一枚の紙を提出した。それを受け取り、名前を確認する。
「あゆみ、か」
「はい。少し悩んだんですけど、歩ちゃん見てて、これしかないなと思って。歩ちゃんはこれから一歩一歩成長していって、それはこの施設を出ても変わらない。ずっと、前に進んでいけるようにって気持ちです」
花見さんは微笑みながらそう教えてくれた。そこに浮かぶ深い慈しみに、俺はまた胸を打たれる。
花見さんが提出する日々の生活記録は群を抜いて詳しく、また児童が何か出来るようになったら、それをこれでもかというほど褒めていた。読むのは児童ではなく職員なのに、そこに花見さんの、児童への思いが溢れているように感じる。
そんな花見さんが考える名前は、温かく、そこに籠る思いが噓偽りでないことがよくわかった。
「ありがとう。承りました」
花見さんはぺこっとお辞儀をして職員室を出て行った。
俺も早く、あの子の名前を決めてやらなきゃ。
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