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復帰 3

 花見さんからはそれ以降も幸月の様子を質問された。  まだ復帰して時間が経っていないためそこまで答えられることも無いのにと思いながらも、俺も幸月の小さな成長や変化を話せることが嬉しかった。 「離れることがトラウマになってるみたいで、さっきも大泣きされたんですけどね。それがいつ収まるかが問題かな」  そう話した時、それまで黙って話を聞いていた悠生が呟いた。 「うーん、それならこの間の案は難しそうかなぁ……」 「この間の案ってなんだ?」 「冴島先生がつばめ棟に移ってた時に、そろそろひなどり棟の子供達の交流をしようって話をしてたんですよ。ここに来てから1ヶ月経ちますし、朝食のみ空き部屋でみんなで取るようにしようかと」  その話を聞いて思い出す。  入所した児童は、通常約1ヶ月程度で他の子供達と交流を始めることになっている。  著しい問題が認められない限り、まずは食事の時間を共有することからはじめ、その後自由時間、最終的には同室で少人数で眠ることに抵抗が無くなるようにしてから、短くて半年、普通は1年後にはつばめ棟へと移る。  つばめ棟では4〜5人の共同部屋で生活し、日中も学校へ行ったり入所児童と共に過ごすことになるので、職員と児童一対一という状況からできるだけ早く共同生活へ移行出来るよう働きかけることが求められていた。    しかし、今の幸月にその交流の時間が持てるかどうか。 「食事は、最近やっと自分で食べれるようになった。でも俺が食べ始めなきゃ食べないし、量も少ない。朝食のみだけでも、幸月には厳しいかもしれない」  そう告げると、悠生は腕を組んで考え込んだ。ひなどり棟の子供達の心身の発達への働きかけは足並みを揃える必要がある。そうでなければ、取り残された児童の回復が更に遅れるからだ。 「では、食事の前に遊びの時間を設けるのはどうでしょう。それで子供達の様子を見てからでも、今後の食事の時間について考えるのは遅くないと思います」  そう提案したのは春広だ。その考えには俺も賛成だった。遊ぶだけ、その空間にいるだけであれば、幸月もどうにか耐えられるかもしれない。 「そうしてほしい。配慮があるととても助かる」 「ぜひそうしましょう! 他の子も、遊びから入ったほうがきっと気持ちが楽ですよ」  花見さんがそうまとめたことで、話はまとまった。悠生も頷き、早速一週間後の午前中、ひなどり棟の子供達の交流会となった。

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