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復帰 4

 ひなどり棟職員の昼休憩は不規則だ。まず担当児童に昼食を届けに行き、その後少し見守ったり一人で食べられる子は部屋に残して休憩に入ったりする。  昼のチャイムを知らせる音と共に、一班メンバーは職員室を出る。廊下に出たとき、施設長にばったり遭遇した。 「冴島、少し時間いいか?」 「はい」  不安げにこちらを見ている花見さんに先に行くよう視線で指示し、俺はまた職員室に戻った。  部屋に入ってすぐ、施設長は決まり悪そうな表情で言った。 「幸月の件はすまなかった。今回は俺の判断ミスだ。花見からの報告書にも、経過は良くないとあった。それを長引かせる結果を招いてしまって、本当に申し訳ない」  そう頭を下げた施設長を見て改めて、この人を責められないと感じた。過ちを認め、それが引き起こした問題にどう対処するかがメルヘンとの関わり方だ。その心構えは、相手が誰であろうが変わらない。 「いえ、メルヘンの子供と関わることはとても難しいことです。私も正直、幸月とどう接すれば良いのか、何が正解なのかわかりませんでした。でも、今回の件で少しは幸月の心がわかった気がします。あとは問題を少しずつ解決していければ良いと思うので、今後もご指導のほどよろしくお願いします」 軽く会釈をしてから、俺は職員室を後にした。

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