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初めての交流

 ひなどり棟児童同士の交流会までの間、「遊び」に慣れてもらおうと、プレイルームからいろいろなおもちゃを持ってきた。  積み木、絵本、ひらがなボード、パズル、おままごとセット、ドミノ……。プラスチックの箱に詰め込めるだけ詰め込んで持ってきた俺を、幸月はポカンとした顔で見つめていた。  部屋の中央におもちゃを置き、幸月に隣に来るように手招きする。彼はすんなり隣に座れるようになった。 「これは絵本。この部屋にあるのとおんなじ。花見先生が持ってきてくれたな」 そう話しかけながら、幸月の前に絵本を広げる。 「これは積み木。これも……少しやったことあったな。こっちはパズル、綺麗な絵が出来るんだぞ。これは……」  一つ一つの説明しながらおもちゃを取り出す。幸月はおもちゃを目で追い、俺が新しいおもちゃを持つとまたそれを目で追った。そんな行動が可愛らしくて、俺の頬も思わず緩んでしまう。  全て紹介し終えた後、幸月が最初に触るのはなんだろうと見守っていると、意外にもひらがなボードだった。  それは50音順にひらがなが並べられたもので、スイッチを入れて適当なひらがなを押すとそのひらがなの読み方が音声として流れるものだ。例えば「あ」を押すと「あ」という声がボードから聞こえる。  ここにくる児童の多くは学校に通っていないため、文字と音が一致できないことが多い。これは文字を覚え、音と一致させるためのものだった。 「ひらがなの勉強がしたいのか?」  そう問うと、幸月はうんともすんとも言わずに、今度は絵本を開いた。  絵本を開き、開いたページのひらがなを指差す。そうしてから、ひらがなボードのひらがなを指差した。そして俺を見上げた。「おんなじだ」と言っているように見える。 「それは、め、だな」 「め」 幸月が俺の言ったことを復唱する。最近の傾向だ。 「このひらがなとこのひらがな、同じだな。幸月はもう見分けられるんだな、すごいぞ」  そう言って頭を撫でると、くすぐったそうに片目を閉じた。頭を撫でても以前ほど怯えなくなったのも、最近の成長だ。  幸月はまたページをめくり、違うひらがなを指差して、ひらがなボードでも同じひらがなを差した。「正解。すごい!」と言うと、幸月はまた同じことをした。  そして「どう?」とでも言うように俺を見上げた。

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