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初めての交流 2

 ひとしきりひらがなボードで遊んだ後、今度はドミノを見せた。    触り方、遊び方のわからないおもちゃに、幸月は自ら触れようとはしない。今回も俺の腕にぴとりとくっついて、彼はおもちゃをどのように使うのかをじっと見ていた。  カラフルなドミノを10個ほど並べたところで、幸月の手をとる。ドミノの方へ引っ張っていくと少し抵抗を感じた。触るのが怖いようだだった。 「大丈夫。怖くない」  人差し指でトンっとドミノを押させると、ドミノは音を立てて綺麗に倒れていった。その音に少しびっくりしたのか、幸月はびくっと肩を震わせて俺に抱きついた。 「はは、これだけだよ。綺麗に倒れるだろ?」 「……」 「幸月もやってごらん。一緒に並べよう」  俺が並べ始めると、幸月もおそるおそるというふうにドミノを並べ始めた。慣れてきたところで俺は見守るだけにとどめ、彼の動きを見ていた。  ドミノを並べる幸月の手は繊細だった。まるで割れ物のようにそれを扱う、細い指。幸月は何をする時もそうだ。何に触れる時も、それが壊れてしまわないように慎重だ。  それを見るたび、今までこの子にそんなふうに触れてきた大人がどれだけいただろうかと考える。  調査報告書で見た凄惨な過去。その過酷な人生の中で、どうしたらこんなに優しくなれるのだろうか。どうしたら、こんなに尊く無垢でいられるのだろう。

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