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得意創作

 幸月の熱は2日ほどかけて落ち着いた。しかし、それ以降どことなく元気が無い。以前から活発な方ではなかったが、前よりも確実に反応が薄くなっていた。食事量が以前と変わらないことが救いである。  交流会及びひなどり棟児童達の共同スペースでの食事は毎日ではなく週一回のペースに決まり、幸月が後から参加してもアウェーにならないように配慮された。    幸月を早くみんなの輪の中に入れるのはまた次の次のステップで、今はまず元気を取り戻してもらうことが先決だ。    どうしたものかと考えるとき、ここ数日念頭に浮かぶのは、メルヘンの特性である「得意創作」だった。  メルヘンはそれぞれ、生まれながらに芸術的方面に卓越した才能を持つ。それが何なのかは成長していく過程で自然と見つけられるものだが、ここにいる子供達の多くはその機会を与えられずにここまで成長しているため、職員が様々なものな触れさせることで見つけていく必要がある。  個々の得意創作が見つかり、それを発散する場ができると、メルヘンの精神状態はぐっと安定する。  実際、ひなどり棟の児童はそれらが見つかった瞬間それまで毎日泣いたり暴れたりしていたのが嘘のように落ち着いて生活できるようになる子が大多数だ。  それくらいこの「得意創作」はメルヘンに重要なもので、裏を返せば幸月の心が安定しないのには、長らくそれを出来ていないからという理由があるように思えてならない。

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