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得意創作 3
それから数日間いろいろな創作活動を試させたが、どれもピンとこないようだった。
現在入所している児童やこれまでいた児童の得意創作を調べ、同じことをさせてみてもダメだ。ということは、幸月のそれはかなり珍しく、まだここでは見られていない得意創作ということになる。そんなもの、俺の想像力だけでは見つけられそうにない。
これまでのメルヘンに関する研究論文なども漁ってみたが、日本において活発な研究ではないためすぐに読めるものは少なかった。英語圏やヨーロッパ語圏の論文を読むには時間がかかり、手を回せていない。
日々の業務もあるしどうしたものか。
行き詰まった俺は、ある日の午後、気分転換につばめ棟を訪れた。
つばめ棟事務室の前のホワイトボードに書かれた、今日の予定を見る。午前中は室内で遊んだり勉強したりしていたようだが、午後は外遊びの時間らしい。確かに棟内はしんと静まり返っている。
一階の教室に入ると、窓から園庭で多くの子供達が遊んでいるのが見えた。追いかけっこをしている子、縄跳びをしている子、みんなで育てている野菜畑を見ている子、日陰で本を読んでいる子など過ごし方は様々だ。しかしみんな、良い表情をしている。
俺は教室の後ろ側の児童用ロッカーの上に並べられた、児童の作品群を見た。
全員分しっかり飾られているので、最近誰が何を作ったのか一目瞭然だ。
歌や楽器演奏を得意創作とする子に関しては形に残せないため、写真が飾られている。録音することもあり、それは時折室内のBGMとして流される。
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