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得意創作 10
幸月は花冠を作った後、今度は草花でコースターのようなものを作り始めた。
茎と葉が折り込まれ、ところどころに花のアクセントがあしらわれたそれは、本当にどこかのお店で使われていてもおかしくないような出来栄えだった。それを作り終えると俺の前に置いて、その次は箱を作り始めた。
黙々と作業する幸月を横で見守りながら、幸月の得意創作はこれだったのかと安堵と驚きが入り混じった気持ちを抱く。部屋では見つからないわけだ。
外に出てから1時間が経過した。日は高く上っている。そろそろ切り上げたほうが良いだろうと判断し幸月に声をかけたが、幸月は首を振って作品作りを続行した。
「でも、暑くて具合悪くなるぞ。ほら、汗かいてる」
幸月は首を横に振る。だが、水分も摂らないままに続けるわけにはいかない。この間も熱でダウンしたばかりだ。
「作品は部屋に持っていこう。少しお花摘んで戻ろうか」
幸月は頑なに戻ろうとしない。
「幸月、ダメ。戻るよ」
これまで直接的に幸月がやるとに関して「ダメ」と言ったことは無かったが、あまりにも頑ななため、少し語気を強めた。
腕を引くと、ようやく幸月がこちらを見た。そして、怯えたような目で、唇を震わせた。
「ま、だ」
「え?」
「まだ……い、ぅ」
「まだ、いる」たったそれだけの言葉が、俺に強い衝撃をもたらした。
幸月がここまで自分の意志を通そうとしたことがあっただろうか。
そんなことを言われて、強制的に部屋に戻すことなど出来ようか。
「……仕方ないな」
幸月にはどうしたって敵わない。
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