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15歳の少年 7

「ようやく目が覚めたんだね。おはよう。体怠いでしょ」 「べつ、にっ!」  最後の力を振り絞って彼は上体を起こして座った。しかし、二日も眠っていればその体勢を維持するのも辛いだろう。  俺はマグカップをサイドテーブルに置いて、ベッドのリモコンを操作した。リクライニングにしてやると、秀人は少し躊躇ったものの大人しくそれにもたれた。 「喉……」  そう一言呟いて、カリカリと喉をかく。俺はベッド脇の冷蔵庫からペットボトルの飲料水を出して手渡した。 「喉乾くよね。喋るのもちょっときついんじゃない?」 「……」  秀人はペットボトルを乱暴に受け取ると、ごくごくと勢いよく飲んだ。まるで、弱っていることを隠すように。  まぁ、それでもいいかと思う。  これから俺が、彼が弱みを見せられるような相手になれば良いだけだから。  俺はベッドテーブルを秀人の前に引いてから、持ってきたホットミルクを一口飲んだ。 「それ、なに」 「ん? ホットミルクだよ」 「ふーん」 「秀人のもあるよ」  青色のマグカップを彼の前のテーブルに置く。作った時よりも穏やかになった湯気が立ち上った。 「……なんで」  秀人はそれを睨みながら、そう呟いた。俺に問いかけたものでないことは、なんとなくわかった。 「秀人と飲みたかったから」 「深夜に飲むホットミルクってね、昼に飲むのより3倍美味しいんだよ」そう続けて、また一口飲む。  視界の端に捉えた秀人の手は僅かに震えていた。ぎゅっと握り締められたそれは、何か感情を堪えているように見えた。 「馬鹿すぎ」 「はいはい」 「馬鹿」 「うん」 「ばーか……」 「なんぼでもどーぞ」  秀人は両手でそっとマグカップを持ち上げて、ゆっくりと口をつけた。いれてから時間の経ったそれは大して熱くないはずだが、彼は少しだけ飲んですぐに口を離した。  その目から、涙がこぼれそうになっているのを俺は見逃さなかった。だが、そのことを指摘するほど無神経じゃない。 「美味しい?」 「……不味い」  秀人は乱暴に目元を拭ってから、もう一度マグカップを傾けた。

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