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不安 2
病室から移動する際、外に出るなら私服が着たいというので希望通り着替えさせることにした。
本やスマホといった物はもらっていなかったようで無かったが、ピアニスト時代買い与えられていた服だけは充実していた。おそらく身だしなみは重要だったのだろう。
パジャマから着替えた秀人は、ワイシャツに薄手のニットベストを着て黒のパンツを穿いていた。様になっている。
「いいね。パジャマより全然かっこいいよ」
「うるさ」
医務室へつながるドアから中へ案内すると、彼はキョロキョロと部屋を見回した。それは怯えというよりは好奇心だった。
「ソファとか、そこのデスクの椅子とか好きなとこに座っていいからね。本は……この辺に漫画があるよ。ちょっと古いけど」
基本的に医学書しか無いが、たまに来るつばめ棟の児童のために子供向けの本も置いている。調査書によれば、秀人の識字能力は問題が無かった。小中高と通った経歴は無いが、おそらく家庭教師でもつけられていたのだろう。
彼なら漫画や普通の小説くらい読めそうだ。
「あとは、タブレットも使っていいからね。使い方わかる?」
秀人をソファに座らせ俺も隣に座る。ローテーブルに置いていたタブレットを起動させ、適当にゲームアプリを開いた。
「ちょっとなら」
「うん。わからなかったらその場で聞いて。俺はここにいるから」
業務用デスクに戻り、いつもの仕事に入る。
視界の端には秀人がいて、彼が何をしてるのか様子を見られるため安心だ。今日は気持ちも落ち着いているようだし、何事も無いだろう。
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