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不安 6
咲ちゃんの大泣きをどうにかやり過ごし処置も終え、今度こそ医務室に戻ろうと早足で歩いていると、またも職員室前で声をかけられた。
次はひなどり棟の職員だ。おそらく事務作業をしている途中だろう。
「百瀬先生。今お時間よろしいですか?」
「どうしました?」
「確認してほしい資料がありまして……」
職員室に招き入れられ、そこに数人職員がいるのを確認する。なんとなく嫌な予感がした。
「これなんですけど、この子の調査書と現在の体調面で気になることがあるんですが」
職員から見せられた調査書と、現在作成中という児童の報告書を照らし合わせる。しかし、詳細を確認するには医務室に届いている膨大な資料コピーが必要であることがわかり、職員室の一室に保管されたそれらを引っ張り出さなければいけなくなった。
「そうですね。確かに調査書の内容と異なる部分がありますね。現在の児童は……」
結局職員から聞き取りも行わなければいけなくなり、俺は1時間ほど職員室に滞在することとなった。
その職員はまだ若手で、話が行った来たりして少々わかりにくい。話の前後を確認しながらの聞き取りにはかなり時間と労力を割かれた。
しかしどうにかその場で問題は解決したと思った後、職員室に入った当初感じた嫌な予感が的中することになる。
他の職員からもその場で相談依頼が来てしまった。
職員は人手不足のため普段酷く忙しい。そしてまた、常勤医師や看護師も不足しているため、舞い込んでくる相談に対処しきれず後回しになってしまうケースも多い。だからといって自ら相談に足を運ぶ時間が無いため、こうして医師が本館一階にやってきたタイミングでみんな今のうちに聞いてしまおうとするのだ。
目が回るような相談をどうにかこうにか処理し切る頃には、正午を回っていた。
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