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プレゼントと提案 2
差し出された手を音楽プレイヤーごと両手で包み、秀人の胸に返す。彼の手は冷たかった。緊張していたのかもしれない。
「俺は大人だよ。そんなこと気にしなくていいの。秀人が喜んでくれたら、買って良かったって思えるから。俺のために受け取って」
秀人は少し躊躇った後、それを自身の膝の上に置いた。初めてもらってくれた。それが何よりも嬉しい。
「なんで、なんで……そんなに、優しく、するんだよ」
なぜ、なぜだろう。
しかし、確実に言えるのは優しくしている自覚なんてなかったということだ。秀人にしてあげたいと思ったことをしていただけだ。
「理由いる?」
「いる。俺、酷いこと……ばっかしてんのに」
彼が自分を客観視したことに少しばかり驚く。やはりこの子は賢くて、優しい子なのだ。
「理由必要なら、好きだから。それが理由」
バッと秀人がこちらを見た。それは驚きと、俺が嘘をついていないか見極めようとしている目だった。
嘘なんかついていない。俺はこの子が好きだと思う。悪態ばかりで手のかかる、でも心は繊細で優しいこの子が。
「俺、今嘘ついてるかな?」
笑って首を傾げると、秀人は顔を歪ませて斜め下を見た。目元が赤い。
あぁ、泣いてしまう。でも、その涙が悲しみでないことはわかった。少しは彼の心に近づけたかな、そう思って、俺は笑みを崩さなかった。
「知らない」
秀人は俺の前で初めて涙を見せた。
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