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プレゼントと提案 3
それから、もう一つ彼に話さねばならないことがあった。
先日、幼馴染の桐也から相談を受けた際にノリで「うちの子と会ってみる?」なんて提案したが、まだ秀人にその旨を説明していなかったのだ。
全く許可も取っていないのにそんなことを言ってしまったのは、幸月くんと関わることが秀人に良い影響をもたらすのではないかと思ったからだった。
幸月くんと同様、秀人もここにきてから同年代の子と触れ合っていない。彼は幸月くんほど対人関係に恐怖を抱いていないように見えるし、そろそろ人との交流を始めなければなと思っていたところだ。
「それとね、プレゼントの話以外にももう一つお話があるんだ」
「何?」
「この施設の子で、会ってほしい子がいるんだ。秀人よりも2つ下の男の子なんだけど」
そう言うと、秀人は少し首を傾げて「なんで?」と尋ねた。
「その子も秀人と同じメルヘンで、今まで酷いことばかりされてきたから、人と関わるのが怖いみたいなんだ。それで、他の施設の子にも怯えちゃって……。今は担当職員としか過ごしてないんだけど、そのままってわけにもいかないからさ。秀人が良ければ、ぜひその子と友達になってほしいんだよ」
大雑把に幸月くんの事情を話すと、秀人は目を逸らして悩む素振りを見せた。
突然こんなことを言われても、困るだろうな。
「なんでわざわざ俺? 他の子と仲良くできないのに、俺なんかもっと無理だろ。きっと……もっと、怖がらせる」
そう言ってぎゅっと拳を作る。
「秀人がその子と会うのに不安なのはそれだけ? 会ってみること自体は、嫌じゃない?」
もしも怖がらせてしまうのを恐れているだけならばなんの問題もない。
それは幸月くんを思いやれているという何よりの証拠だ。その優しさが持てる彼なら、きっと幸月くんと会っても大丈夫だろう。
「嫌じゃないなら会ってほしい。怖がらせるかもって思えるなら、きっとその子を傷つけることはないと思うよ」
秀人はそれでもすぐには頷かなかった。しかし随分悩んだ末、彼は「会ってみる」と答えてくれた。そのことにホッと胸を撫で下ろす。
「その子、名前はなんて言うの」
「幸月くんだよ。幸せな月って書いて、幸月」
「ふーん」
秀人は興味なさげな返答をしながらも、その後もいろいろと質問してきた。幸月くんはどんな子か、何か好きなものはあるか、してはいけないことはあるか……。途中からは紙とペンを要求しメモまでし始めた。
そんなところに彼の几帳面な性格が表れている気がする。
秀人はメルヘンの子供の幼さや、その環境による繊細さをよく理解しているのだろう。だから、きっと過剰なまでに質問するのだ。万が一にも傷つけてしまわないように。
幸月くんと秀人を会わせることを提案してみてよかった。それが功を奏すかはまだわからないが、少なくとも秀人から自発的な言葉を引き出すことができた。
2人は出会ったらどうなるのか。秀人は優しい子だし、幸月くんもきっと大丈夫だ。
未来を想像するだけで心は浮き足立っていった。
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