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1-7. 消したい過去
──視たくない夢、消したい過去。しかしそれは、絶対に俺の中からは消えてくれないのだ。……ああ、また。この光景。飽きる程視て、枯れる程泣いた、あの時の。8年前の、出来事。
ばちゅ、ばちゅ。激しい水音と共に、腹の奥を抉るように熱いものが出ては入ってを繰り返していく。
「ああ、ルイス! ルイス、僕の騎士。僕だけの騎士だ」
「あ、あ、……はあっ、あっ! ぐっ……!」
痛い。痛い、熱い、きもちいい。きもちわるい。豪華絢爛な部屋での質の良い寝台の上で行われる蹂躙するようなセックスに、私はただ喘ぐことしかできなかった。
「なあ、そうだろうルイス? 君は誰のものだ?」
「あ、わたしは、……っ、あ。あ!」
迷っていると、腹の奥の弱い所をぐりぐりと彼の硬いもので教え込まれるようにして貫かれる。何度も、何度も、何度も、何度も。あ、イってる、ずっと……! ずっとイってる、……。
「悪い騎士だ。すぐ答えられないなんて、ねえ? ルイス?」
「ごめんなさ、あ゛っ……、ん、ぐっ」
ただでさえきつく縛られた両手を、更に強く捻り上げられる。悪い騎士は、いやだ、私は、良い騎士になりたい。みんなを救うような、そんな──。だから、厳しい訓練にも耐えて騎士になったんだ。
「謝罪はいいから。ルイス、君が仕えているのは?」
「ひ、あっ、国にっ、王家、に……! ぁあっ……!」
はあ、と呆れたような、でもそれでいて興奮したような吐息が私の首を掠める。私のものは射精ができないように、でも傷はつけないように縛られていて、その代わり、中でイけるようにと、中の気持ちの良いところばかりを目の前の容姿端麗な銀髪碧眼の彼に、ずっと揺さぶられていた。数時間前からずっとずっと、何回も教え込まれるように犯され続けている。……そして、今日だけではなく、半年程前から定期的に、だ。
「本当に、君は……。ああ、焦がれるほど美しく清廉だな。……でも、僕の騎士としては正しくない。いいかい、また今日も教え込んであげるよ。君が僕だけの騎士になるまで、何度でも──」
「あ、っ……! イって、ずっと、っ……どうし、て。……ぁ、あッ! そこ、ゃだ、やだあ、」
「ああ、ここだろう?」
「──ッ! ぁ、~~っ」
散々気持ちの良いところが知られているから、そこを重点的に責められるともうどうしようもなくなる。しかも、今私を手酷く抱いているこの人の能力が“目が合った相手を数分間陶酔させる、もしくは威圧して数分間動けなくする。ただし能力のかかり具合は人によって違う”というもので、相性のせいか私はこの人の能力にかかりやすくて、一度捕まるともう逃げられない。……というか、そんな能力なくとも自国の王子相手に逆らえる騎士がどこにいる?
「でんか、もう、ゆるし、っ……! ひ、あ、あ」
「だめだ。ほら、──僕の目を視て、ルイス」
「ぁ……。……あ、あ……」
無理矢理、目を合わされて、そのまま深くこの人に陶酔する。きゅ、と腹の奥が疼いて……、これだけでイきそうになる程気持ちが良くて、今までもこの目に何度も何度も屈服させられていた。……王や王妃、騎士仲間達も、私がこうして犯されていることは薄々わかっているだろう。しかし私は男だから孕む心配もないし、まだ21歳でどこにも影響力のないただの騎士だから、わざわざ王子の機嫌を損ねてまで助けてはくれない。この人は第二王子とはいえ、能力があまりにも為政者向きすぎて、信奉者も多いのだ。
「相変わらず僕に陶酔する顔がかわいいね、ルイス。……ああまずい、そろそろ君を帰さないと面倒なことになる。名残惜しいけど、一応王子として婚約者も大事にしないとね。そうでしょ、ルイス? ──君の主を裏切って気持ち良くなって、僕の騎士は淫乱だねえ」
「……っ! いわないで、おねが──、あッ、ゆるしてください……ゆるして」
私はこの人の婚約者──アデル様に仕え始めてまだ1年の新米騎士であり、偶然王都外での訓練中に彼女を助けたことで、こんなに若く実績のない騎士にも関わらずアデル様の側に置いて頂いていた。なのに、仕えるべき主が行く行くは結婚するであろう相手にこんな──。アデル様の笑顔が、信頼が、いつか消え行くのだと思うと涙が出る。彼女のような素晴らしく清廉な人に仕えられて凄く幸せだったのに、一生の忠誠を誓ったのに、私は、私は──!
「ああ、きもちいい。ルイス、出すよ──」
「~~っ! あ゛、……あ──」
最奥まで貫かれて、そこで熱いものが放たれるのを感じた。そして、彼のものがずぷりと抜かれた後、いつものように王室に仕えている騎士の証であるバッジをやっとのことで返される。それはいつも行為の前に没収されて、行為が終わった後に口移しで彼の口から奪い取ることでしか返してもらえない。もういやだ、こんなの、こんな──。
──バンッ!
急にドアが開け放たれて、かつかつというヒールで歩く時独特の音が近付いてくる。数時間にも及ぶ行為に、意識が朦朧としていたところに、ぱん、と頬が叩かれたことで急激に頭が冴えた。──目の前では長くて美しい金色の髪が風で舞っており、見通すような金の瞳が私を映している。……ああ、私の、仕えるべき人。
「アデル、さま──……」
「──貴方はもうわたくしの騎士ではないわ、ルイス・ローザー」
──この世で一番敬愛する人に吐き捨てるように言われたその瞬間、この世の全てのものから輝きが失われた気がした。
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