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ドラフト翌日からも亮治の周りはなんだかんだ忙しかった。 地元のテレビ局は1日密着取材したいなんて言い出すし、自称後援会のおっちゃん達に挨拶回りさせられるし。 それでも亮治は疲れた顔はしても嫌な顔はせず、ものすごく真摯に対応してたと思う。 元々は閉鎖的だと言われるこの地域ではあるけれど、関西から逃げてきた亮治とおばさんを温かく受け入れたんだ、きっと本人なりに恩義を感じてるんだろう。 そして夕方から夜にかけては、これまでと同じように一緒に晩飯を食っている。 いや、正確には違うかな...高校に入ってからは野球の練習が遅くなる事も多くて殆どそんな機会は作れなかった。 だから毎日一緒に食事をできるのは、中学生以来かもしれない。 飯を食ったら、そこからは俺の部屋にこもって二人で怪しげなお勉強タイムだ。 パソコンであれやこれやと男性同士でのセックスの仕方を探しては、これは役に立ちそうだと思えば亮治に声をかける。 どちらが突っ込むか、どちらが突っ込まれるかは、とりあえず一旦結論を先送りする事にした。 まずは二人共が正しい知識を得て、そして二人で大切な夜を作らなければいけないのだ。 どうやら、突っ込む方はたいがい気持ちよくなれるようだが、突っ込まれる方は必ずしもそうとは限らないらしい。 どれだけ頑張ろうが大切にしようが体がその行為を受け付けられない人もいるんだそうだ。 亮治なり俺なりが、その『受け付けられない』タイプの人間じゃないとは限らない。 念のため、挿入を伴わないで気持ちよくなれる方法についても確認しておく。 お互いで抜き合いをするというのもその方法の一つらしい。 これは...もう何回かしてしまったから、今更勉強の必要は無いだろう。 あとは、口で気持ちよくする方法。 まあAVは観たこと無いけど、そういう事をするんだってくらいの知識はある。 問題は、男の性器をしゃぶれるのか?って話だな。 「亮治、お前俺のチンポ舐められそう?」 「ん? 余裕余裕。チンポでもケツの穴でも何でも舐められるで。だって、たかちゃんのんじゃろ? たかちゃんは難しそう? あ、別に無理じゃったら舐めんでも大丈夫よ。たかちゃんが握ってくれるだけでもすぐ飛ばせる自信あるけ」 「ただ早いだけじゃないか」 得意気にフンッと鼻息を荒くする亮治の頭をそこそこの力でペシッと叩き、少し頭の中で想像してみた。 あのずっしり大きいモノを握る事は勿論できる。 撫でて扱いて、その先から飛び出してくる精液を手で受ける事も、なんなら体にかけられる事も何の抵抗感も無い。 じゃあ口は? 舐めて含んで吸い付いてって? ......あ、できるわ。 寧ろしてみたいくらいかもしれない。 「フェラいけるわ、お前のんなら」 「えっ!? 想像したん? イヤン、たかちゃんのエッチ」 「お前もしたじゃろうが」 「したした! 俺エッチじゃもん。なんなら今から試してみる?」 「それは...やめとこう。旅行まではキスだけで我慢しとこうや」 「......うー...わかった、右手で我慢する」 結局抜くんかい!と思ったけど、たぶん俺もその時を想像しながら抜くから突っ込まないでおこう。 口でする以外にも、お互いの先端同士を擦り合わせて気持ちよくなるという方法もあるらしい。 これにはヌメりのある潤滑剤があった方がいいみたいだから、一応買っておいたローションも役に立ちそうだ。 挿入を伴わないセックスのやり方はオッケーだ。 まあ、風呂での抜き合いプラスαな程度だろう。 今度は肝心の『挿入』についてを調べてみる。 ありがたい事に、図解付きで丁寧に説明してくれてるサイトを発見した。 「あ、やっぱり入れられる方は先に中洗うとかんにゃいけんみたいじゃのぉ」 「そりゃそうか...入れてみたらお釣り付いてきたら困るもんねぇ。ま、俺はたかちゃんのお釣りなら舐められるけど」 「とりあえず変態発言は止めとけ、萎えるけ。ただ、イチャイチャしだしてからどっちが入れるかなんとなく決める...いうんはできんちゅう事じゃの。ちゃんと決めとかんにゃ...」 二人してうーんと腕組みして上を向く。 このままお互いが入れさせろ入れさせろと言っていても埒が明かない。 「あのなぁ、俺ちょっと考えたんじゃけど...」 「ん?」 「とりあえず今度の旅行の時は、俺が入れられる方でええわ。交代にしようで。どっちが先に入れようが、お互いが初めてなんは変わらんじゃろ? ほじゃけ、旅行の時は譲っちゃる」 「た...たかちゃん......」 「その代わり! さっきも見たみたいに、入れられん人間もおるらしいし、俺が入れられんかった時の為に、お前もケツの中一応洗うちょけよ? それでもええんじゃったら、初めての夜は俺がお前を受け止めちゃるわ」 亮治はフニャフニャで穏やかそうに見えて、実は結構負けず嫌いで頑固だ。 だからこそ、未経験者はいらないと断られたのにリトルリーグの入団テストを意地で受けたし、それからも試合に勝つ為の努力は惜しまなかった。 今回も...きっと自分から折れる事はしないだろう。 折れられるならとっくに折れてるはずだし、譲れない何かがあるに違いない。 ならば俺が折れるしか無いだろ? だって俺の一番の目的は『亮治の初めての男になる』事じゃなく、『離れて暮らしても大丈夫だって思う為のお守り』が欲しいんだから。 亮治の肌のぬくもりを知れたらそれでいいんだから。 「ほんまに...ええん?」 「ええよ、別に。ちゃんと二人で協力して、最高に幸せな夜にしようや。ただ、入れられんかったけ言うて、いきなり俺の事嫌いになるんだけは無しな」 「その時は喜んで俺のお尻を差し出します」 「よろしい! ほしたらあとはちゃんと手順とか覚えて、ちょっとでも気持ち良うなれるように勉強しとこうで」 たぶん周りから見れば馬鹿馬鹿しい事をやってるんだろう。 けれどそれからは毎日、俺も亮治も泣くほど真剣に、いかにしてスムーズに素早くコンドームを付けられるかの練習を始めた。

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